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都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

非国家主体のアクションに期待 「地球温暖化は解決できるのか」 ブックレビュー

今世界を動かす最も中心にいる人たちが、低炭素・脱炭素行動に意欲を燃やしているのです。皆さんもこの将来性のある低炭素競争に参加しませんか?そこに向かって世界のお金が動き、人が集まり、技術が進み、ダイナミックに社会が変わりつつあります。

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本書のタイトルになっている「地球温暖化は解決できるのか?」という問い。

結論は、このままでは、100年後には地球の平均気温は4℃を超えてしまう。そして、最も気温上昇を抑えることが出来ても2℃程度の上昇は避けられない。

つまり、地球温暖化はもはや避けられない事態になっているが、温暖化対策により、2℃未満の気温上昇に抑えるのか、それとも、今のライフスタイルを続けて4℃上昇する世界を招いてしまうかということ。

 

●もはや環境最後進国 日本

一般的な肌感覚として、気温が2、3℃上がっても問題ないじゃないかと思われがちですが、これはあくまで世界の平均気温。そして本書を読んで驚いたのが、1万年以上前の地球の温度。

今から1万5000年前の氷期の平均気温は、現在の平均気温よりもたった4度から7度低かっただけであることがわかっています。つまり平均気温が5度違うならば氷期になるような大きな変化を地球上にもたらすのです。しかもこれは1万年以上もかかって変化したものです、現在はたった100年間で平均気温を1度も上昇させるような変化を地球上に発生させています。

 そして、本書を通して改めて実感したのは、地球温暖化対策とエネルギー問題やその政策は深く結びついていること。

さらに、1997年の京都議定書の頃、環境分野では世界でもリーダーシップを発揮していた日本が、パリ協定では、先進国の中でも温暖化対策には最も言っても差し支えない位、消極的で残念な国になってしまったことを痛感することでしょう。

 

●小説にも勝るノンフィクションのストーリー

本書の特筆すべき一番の醍醐味は、2015年 パリ協定の現場に立ち会った著者ならではの採択に至るまでの各国間の交渉の流れが詳しく書かれていること。

冒頭で述べた気温上昇を2℃未満に抑えること、それを長期目標として世界の国々全てが初めて合意できたのがパリ協定。

これまで、温暖化対策の国際会議と言えば、先進国と開発途上国の対立というのが交渉の構図でしたが、パリ協定では、温暖化対策の積極派と消極派との対立に変わったこと。

その変化の原動力になったのは、最も開発が遅れているグループに属するアフリカ各国やツバルやグレナダ等が属する島国連合。つまり、気候変動により、最も被害を被る貧困層を多く抱えるエリアであったり、海面上昇により、国そのものの存続が危ぶまれる島国。こうしたグループが、経済成長を優先させたい中国やインド等に呼びかけ・・・

温暖化対策に向けた各国の駆け引きと交渉のストーリー、小説にも勝る面白さがありました。

 

●非国家による温暖化対策のアクション

今、まさに海外では、地球温暖化対策に向け、民間企業を中心にその動きが加速化しています。

まずは、本書でも紹介されている、国連のWebサイトにそのプラットフォームが構築されている「NAZCA」。現時点で、企業や自治体、地域等が自ら、温暖化対策へのアクションやコミットメントを登録しています。ぞの数は、全世界で2万件近くにも上ります。

また、事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟する、UKで立ち上げられたイニシアティブ RE100

2019年5月現在、175の企業が参加し、日本企業は19社(リコー、イオン、アスクル積水ハウス大和ハウス電通イージス・ネットワーク、富士フイルムホールディングス富士通ソニー丸井グループ城南信用金庫戸田建設野村総合研究所ワタミ、エンビプロ・ホールディングス、芙蓉総合リース大東建託東急不動産)が参加。その参加数は年々増えています。

 

さらに、日本に必要な政策として本書でも提言している、炭素税や排出権取引制度の導入。この5月には、驚くべきニュースがアメリカから届きました。

なんとナイキやマイクロソフトユニリーバ等の世界を代表する企業75社が連携し、アメリカ議会にカーボンプライシング、つまり、排出した二酸化炭素に価格を付けることや気候関連法成立を求める声明を議会に提出したのです。

www.sustainablebrands.jp

パリ協定 脱退を表明しているトランプ政権下でも、温暖化対策に積極的で、しかも短期的にはコスト増にならざるを得ない炭素税の導入をも後押しするアメリカの先進企業。

一方、炭素税導入には既に経団連を始めとする産業界の団体が反対を表明し、温暖化対策に消極的な現政権の日本。日本企業はこうしたアメリカの先進企業に追随しパリ協定の目標達成に向けて主導権をとることが出来るのか?

今世界が注目していると言えます。