Marketing They Are a-Changin'

都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

グロテスクな日本の食の姿 「フード・マイレージ」 ブックレビュー

突出したフード・マイレージに象徴される現在の日本のグロテスクともいえる食の姿は、まぎれもなく私たち自らが選択した結果なのである。であれば、それを少しでも健全な姿にもどしていくのも、私たち一人ひとりの選択によって可能であるはずだ。

f:id:changein:20190608142636j:plain

まずは、本書のテーマであるフードマイレージの定義から。

フードマイレージとは、食料の輸送量と輸送距離を総合的・定量的に把握することを目的とした指標ないし考え方である。そして、食料の輸送に伴い排出される二酸化炭素が、地球環境に与える負荷という観点に着目するものである。

フード・マイレージの計算方法は、2トンの食料を300km輸送した場合は、2×300=600t・km(トン・キロメートル)という単純なもの。このフード・マイレージの数値に、二酸化炭素排出量を掛け合わせることにより、食料の輸送による環境負荷定量的に把握することができるというわけです。

 

戦後のライフスタイルや食の嗜好の変化は、食の安全や食糧自給率の問題だけでなく、地球環境に大きな影響を及ぼし、日本人のフードマイレージは、先進国の中でも突出して高く、本書で指摘されるグロテスクと言われる日本の食。

その解決策として挙げられるのは、少しでも地元の旬のものをつまり、地産地消に繋がる買い物をとの事でありますが、最近読んだ社会課題に関する書籍同様、絶望的な気分になる一冊。

本書は、1982年に農林水産省入省し、現在は、大臣官房統計部数理官に従事、ライフワークとして、フード・マイレージの普及啓発に取り組む著者の渾身の一冊と言っても良さそうです。
ここでは、改めて日本の食の問題が地球環境に大きな影響を及ぼしているのか、を本書を紹介しましょう。

 

●日本の食と地球環境問題

なかなか日本の食の問題と結びつきにくい地球環境問題。本書では、以下、三つの観点があることを指摘しています。

  1. 日本が輸入する大量の食料の生産のために、輸出国の農地や水等の資源や環境に大きな負荷を与えていること
  2. 日本に大量に持ち込まれる食料が、日本自身の環境に負荷を与えていること
  3. 日本に輸入される食料は、長距離輸送の過程で大量の二酸化炭素を排出し地球環境に負荷を与えていること

一つ目の輸入国でよく言われるのが、バーチャル・ウォーターのこと。食料の生産には大量の水が必要とされるため、食料の輸入にも、仮想の水の消費つまり、バーチャルな水を大量に消費しているということ。

本書によれば、それぞれの食物の生産量に対して必要となる水の量は以下の通り。

とうもろこし:1,900倍
小麦:2,000倍
牛肉:21,000倍

さらに、水が豊富と言われる日本でも、このバーチャル・ウォーターの消費を考慮すれば、実に日本必要となる水の2/3は、海外に依存している計算になるということ。

 

二つ目は、私自身も初めて知ったことでしたが、大量の食料の輸出入は、地球上の窒素量に多大なアンバランスの影響を及ぼしているということ。なぜ、窒素バランスによる影響の内容までは触れませんが、人間の経済活動が自然本来の環境に影響を負荷を与え、アンバランスな状態を生み出しているということ。

 

三つ目の輸入による二酸化炭素排出の問題は、すぐに理解できるでしょう。

本書の帯に書かれた、大根 4kgの輸送に伴う、二酸化化炭素の排出量は、以下の通り。

東京都 小金井市産(地元):2g
神奈川県 三浦市産:55g
中国産(輸入):760g

 そして、冒頭に述べた、日本の食は地球環境に多大な影響を与え、先進国の中でも突出して高いことを示すグラフはこちら。

f:id:changein:20190608142617j:plain

本書より

 遠くから食材を運んだり、保存するために無駄なエネルギーを使ったりすることなく、地産地消の食材を食べること、そのための食育が重要であることが本書でも指摘されるわけですが・・

私たち日本人は、突出したフード・マイレージに象徴されているように、食料に限らず大量の物質を輸入することによって、世界有数の経済規模と所得水準を実現しているのである。その日々の私たち自身の食生活が、地球環境にどのような影響を与えているかということについて、想像力を働かせていくことが必要とされている。

地球環境に与える負荷はもちろん、食の安全に加えて、本書では特に言及させていませんでしたが、フード・セキュリティの問題も・・日本の食に対する、多くの不都合な真実を知ることになった一冊でした。

 

いま、出来ることを少しずつでも、ハチドリの様に

 

著者運営 フード・マイレージ資料室もぜひ

フード・マイレージ---あなたの食が地球を変える(新版)
 
ハチドリのひとしずく いま、私にできること

ハチドリのひとしずく いま、私にできること