Marketing They Are a-Changin'

都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

Re-Imagine~再考せよ 「大量廃棄社会」 ブックレビュー

大きな変革の一歩は、たいてい、気づかれもしないような小さなきっかけから始まっている。ボランティアや社会起業家といった社会貢献の形は、誰もが気軽に、というわけにはなかなかいかないだろう。だが、普段の暮らしの中でも、できることはたくさんある。毎日の暮らしを支える商品がどのように作られ、手元に届いているかについて関心を持つ人が増え、自分の買い物の仕方を変える人が増えれば、企業も、社会も、変わっていく。(本書より)
大量廃棄社会
一般によく言われる「大量生産・大量消費」、これからは、「大量生産・大量廃棄」と言い換えた方がよさそうです。つまり、本来、人の口に入れられたり、袖を通すことを前提に作られた食品や衣類は、「消費されず」に大量に捨てられているから。

 

今回のブックレビューは、朝日新聞社の女性記者 お2人による「大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実

 

節分の日の翌日に食品リサイクル会社で廃棄される大量の恵方巻き、1日9トンもの古着が持ち込まれるリサイクル会社の倉庫、表紙をめくるとこうした不快感満載のカラー写真で始まる本書。
一方で、これまで当たり前に行われてきたことに違和感を感じ、素朴な疑問を持った人々が数多く登場する本書。読後は予想に反して、その重々しい気分が晴れ、前向きになるそんな一冊でした。

 

●持続可能でないアパレルとコンビニの商習慣

 

バーバーリー:年間41億円
H&M:年間12トン

これは、海外のアパレルメーカーが年間に焼却している自らが製造した商品。

著者の推計によれば、国内のアパレル商品の供給量約38億点に対して、消費量は約20億点。つまり、廃棄量は18億点にも及ぶわけです。

 

そして、本書で指摘されているのが、アパレルの製造現場の課題。それは、なにかとニュースになる海外からの技能実習生の受け入れの問題。実は、受け入れ先の半数以上は、アパレル関係が占めるとのこと。アパレルの生産工場といえば、中国やバングラディッシュ等が思い浮かびますが、本書で指摘される製造コスト圧縮の流れは、国内でも経済的な弱者を生んでいるということ。

 

また、食料自給率4割にも満たない日本の食品ロス(まだ食べられるのに捨てられる食品)は、世界中の食糧支援量のおおよそ2倍という事実。
本書では恵方巻きを題材として、コンビニ会計と言われる、独特の会計方法が紹介されていますが、どれだけ廃棄する商品が発生しても、大量生産すればするほど、コンビニオーナーが苦しみ、本部が儲かる仕組みというもの。ちょっと驚きでした。

 

日本には、いまや世界にも浸透した「もったいない」の精神があるはず。しかし、それ以前に、将来の資源や食料不足が叫ばれ地球自体の存続が危うい中、これらのビジネスは、そもそもサステナブルではないし、低モラルなビジネスであるということ。

 

24時間営業問題でここ最近クローズアップされるコンビニ業界。人口減少社会という新しい時代を迎え、廃棄問題しかり、新しいビジネスモデルへの変革が求めていると言えそうです。

  

●希望の光

 

この様な気が重たくなる内容が含まれる中、読後感の清清しさは、こうした状況においても、新しいビジネスで、食品ロスやアパレルの大量廃棄問題を解決しようとする、希望に満ちた方々がたくさん紹介されているから。
是非、本書で紹介されるこれら企業サイトにアクセスして希望の光を感じて下さい。

 

法人在庫処分に特化した在庫買取企業。個人向けECサイトも運営

 

様々な企業同士が連携し、 リサイクルしたい消費者と、リサイクルしたい企業をつなげ、リサイクル活動を促進する取り組み

 

10YC

着る人も作る人も豊かに、持続可能なモノ作りのサイクルを構築するアパレルメーカー

最高品質。エシカルな工場。徹底した透明性を謳う、米国のアパレルメーカー

 

工場との直接契約により、メイドインジャパンの高品質な商品を提供するアパレルブランド

オンワード樫山の子会社が運営する低価格・短納期オーダースーツ

 

フェアトレードやオーガニック素材にこだわるブランド。

 

広島県の厳選された原材料によるパンを捨てない(廃棄するパンを作らない)パン屋

 

捨てられてしまう食材の積極的な活用や、学調味料、保存料などの添加物を一切加えない惣菜店

 

縫製工場等に勤める労働者の権利保護を進める団体

 

透明(原価コストの透明性)なパンツを販売する下着

 

メルカリの社長インタビューも良い意味で期待を裏切られた共感できる内容でした。

●Reimagine~再考せよ

食べ物でも衣類でも、今買おうとしているものは自分にとって本当に必要なのか?本当に有効利用されなければ、買い物の全てはゴミとなる。本書を読めば、その考え方がすんなりと受け入れられることでしょう。

 

そして、本書を読みながら思い出したのが、パタゴニアによる数年前のブラックフライデーでの「Don't Buy This Jacket」キャンペーン。
Dont-Buy-This-Jacket-Ad
年末商戦真っ只中のブラックフライデーに、パタゴニアは、「そのジャケット,本当に必要ですか?買わないで下さい!」と消費者に投げ掛けたわけです。そして、こうしたメッセージのキャンペーンにも関わらず、消費者はその企業姿勢に共感し、売上はアップしたそうです。

 

一般的な、Reduce、Reuse、Recycleの3Rに加え、最近では、この3RにRefuse(不要なモノを買わないこと、断ること)を加えた4Rといった考え方も少しづつ浸透していますが、パタゴニアが掲げるのは5R。

 パタゴニア

 パタゴニア Webサイトより
ここで、注目すべきは、5つ目の「Reimagine」でしょう。

 「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」をミッションステートメントに掲げるパタゴニア

私たち消費者は、サステナブルな社会に向けて、普段の買い物においても、未来のこと、身近な社会のこと、そして地球の裏側のことまで、もう少し想像力を働かせる必要がありそうです。

 

商品廃棄で非難を浴び、その手法を改めたバーバリー
最後に、問題発覚一ヶ月後に、これまでのやり方を改めるとした記者会見でのマルコ・ゴベッティCEOのコメントを紹介しましょう。
 
「現代のラグジュアリーとは、社会や環境に責任を持つことを意味する。この信念はバーバリーの核であり、長期的な成功の鍵だ」

 

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)