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都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

衣食住たりて礼節を知る と 働かざる者、食うべからず の攻めぎ合い

ベーシック・インカム社会福祉に関する制度というより、ワークライフバランスや仕事観、人生そのものの生き方に関連する深いテーマである。多様な働き方、多様な価値観、多様な生き方が求めれる時代だからこそ、人間としての尊厳に関わる最低限の生活は保障され、その後は人それぞれが生き方を選択する、そんな議論のスタートとなる社会制度と言える。

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2018年12月まで、期間限定でフィンランドが導入する等、ここ最近よく目にするベーシック・インカム制度。
ばら撒きと思われかねないその仕組みであり、制度を整備するための財源や共産主義とはどうちがうのか?基本的な疑問は尽きませんが、ベーシックな知識習得のため、本書(ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える)を手にとりました。

題名には入門というキーワードが含まれていますが、ベーシック・インカムに関する歴史的背景や社会運動、様々な学者のスタンス等、知識ベースゼロの自分にとって、新書の入門書にしては、とても充実した読み応えのある内容でした。

ベーシック・インカムの定義

本書では、アイルランド政府が2002年に出した「ベーシック・インカム白書」より、ベーシック・インカムの定義を以下の様に紹介しています。

・個人に対して、どのような状況におかれているかに関わりなく無条件に給付される
ベーシック・インカム給付は課税されず、それ以外の所得は全て課税される
・給付水準は、尊厳をもって生きること、生活上の真の選択を行使することを保障するものであることが望ましい。その水準は貧困線と同じかそれ以上として表すことができるかもしれないし、「適切な」生活保護基準と同等、あるいは平均賃金の何割、といった表現になるかもしれない。


さらに、鍵となる特徴として、以下内容が記されていました。

・現物(サービスやクーポン)ではなく金銭で給付される。それゆえ、いつどのように使うかに製薬は無い。
・人生のある時点で一括で給付されるのではなく、毎月ないし毎週といった定期的な支払いの形をとる
・公的に管理される資源のなかから、国家または他の政治的共同体(地方自治体など)によって支払われる
・世帯や世帯主ではなく、個々人に支払われる
・資金調査なしに支払われる。それゆえ一連の行政管理やそれに掛かる費用、現存する労働へのインセンティブを阻害する要因がなくなる
・稼動能力調査なしに支払われる。それゆえ雇用の柔軟性や個人の選択を最大化し、また社会的に有益でありながら低賃金の仕事に人々がつくインセンティブを固める


制度導入の意義と働き方改革

とりあえず、ベーシック・インカムが導入されたとすれば、貧困問題やそれにともなう犯罪等も解消されそうです。そして、社会福祉に関わること以上に、働き方への影響。
ベーシック・インカムの導入には、「労働への意欲が失われる」といった意見もある一方で、「生活のための労働が減る」つまり、生きるための労働から、モチベーション3.0ではありませんが、自己実現の労働や仕事を目指すことが出来るといった、相反する議論が起こりそうです。

ベーシック・インカムの受給により、子供からの夢だったアーティストを目指したり、自分のスキルを活かしワークシェアリングを積極的に行うことができたり。
ベーシック・インカムと言えば、新しい社会福祉の制度設計の話と思っていましたが、それに加えて、ワークライフバランスや仕事観、人生そのものの生き方に関連する深いテーマと言えます。
多様な働き方、多様な価値観、多様な生き方が求めれる時代だからこそ、人間としての尊厳に関わる最低限の生活は保障され、その後は人それぞれが生き方を選択する、とても興味深い制度と感じられました。

日本での導入は?


本書を通してしったのは、日本は他先進国と比べて、補足率が著しく低いこと。補足率とは、生活保護を受給できるはずの世帯のうち、実態に受給している世帯の割合(補足率)との事ですが、ここ最近も全く改善されていないとの事。
少子高齢化社会を迎えることによる日本の年金制度の問題、様々な財源の問題から、生活保護受給の調査や支給に関わる制度や体制、年金制度の管理や組織をなくしたり、コンパクトな政府や自治体を目指すことは、議論のテーブルに上がりうるものであると感じました。導入への道筋は時間もかかり険しそうですが、日本でも真剣に議論されてもいいのかもしれません。

そして、本書を手にした時から疑問に思っていた財源の問題は、なるほどと思わせる以下記述を紹介しましょう。

普通選挙制を行うことにも、公教育制度をとることにも予算がいる。しかし財源問題をたてにこれらのことを行わないことにはならない。なぜならそれば必要だという合意があるからである。それが必要だという合意があれば、他の予算を削ったり、増税したり起債したりして、それに見合う財源を調達すれば良いだけの話である。

最後になりますが、「南」と「緑」つまり、貧困問題と環境問題と絡んで、ベーシック・インカムが議論されていることが、とても興味深いトピックスでした。