Marketing They Are a-Changin'

都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

二人の孫への"未来への手紙"「気候危機」ブックレビュー

時間が限られているなかでのCO2排出量の大幅削減は、社会・経済・技術の大転換を意味する。これは新たな産業革命と呼んでもいいかもしれない。IPCCの1.5℃特別報告書などの科学的知見を信頼して大転換に乗り出すかどうかが問われているのである。(本書より)

f:id:changein:20200216161113j:plain

地球温暖化、気候変動ではなく「気候危機」。

このタイトルが切迫した今の状況を端的に表していると言っていいでしょう。

 

先月出版されたばかりの一般的には気候変動に関する本書。ここ最近のグローバルでの国や自治体等の動きをキャッチアップした出版物としては、恐らく最新刊と言える本書。

 

以下内容で構成される本書ですが、

第1章 革命前夜1ー温暖化の科学と文明の持続可能性

第2章 革命前夜1ー極端気象と気候変動

第3章 革命勃発ー気候ストライキ始まる

第4章 自治体や国家が動くー気候非常事態を宣言し動員計画を立案する

 前半のいかんともしがたい陰鬱な気分の内容から一転、後半の「革命勃発」以降は、世界の国々や自治体の野心的な最新の取組み内容の数々がコンパクトにまとめられています。 

世界各国、自治体等の個別の動きをここで紹介することは控えますが、これでもかと言う程の最新の動きを一通り把握するということでは、最適な一冊と言えるでしょう。

 

そして、改めて感じたのは、ノーベル賞候補にもなったグレタさんの行動が、世界を動かすの大きなきっかけの一つになっていること。スウェーデンでのたったひとりの気候ストライキが、世界に拡がり、第二、第三のグレタさんが各国に登場し、昨年の気候マーチでは、世界で760万人が賛同するうねりにまで発展していることは、誰もが知ることになりました。

 

また、温暖化問題と言えば、IPCCに注目が集まりますが、それ以外にも、様々な主張や宣言に対して、世界中の多くの科学者がそれらに署名し行動していることを知ることになりました。

さらに、以下の海外メディアの動き。

「ガーディアン」紙は、温暖化懐疑論者と従来呼んでいたものを、今後は温暖化科学否定論者と呼ぶことにすると発表している。人為起源温暖化説に今日十分な科学的証拠があるからである。

BBCでも、人為起源温暖化説とその他の説を同じ様に取り上げることは今後行わないと表現している様です。日本も是非見習って欲しいものです。

 

そして、国連の会議では希望したにも関わらず、具体的な政策がないとの理由で発言の機会を与えられなかった日本の気候変動問題での存在感のなさ。

一方で、国内の一筋の光とも言えるが、地方自治体として、2019年9月、日本で初めて「気候非常事態宣言」を出した、長崎県壱岐市の動き。

「壱岐市では温暖化により海水面が上昇し、藻場が減少して漁獲量が70年で半減した。50年に一度の大雨が過去3年間で3回発生している。SDGsのさらなる推進を目指し宣言を決断した」(壱岐市 白川 博一市長)

遡ること約1年前、SDGs未来都市に選定された当時、私が行った壱岐市長のインタビューも併せてお読み下さい。

 

「SDGs未来都市が目指す地域社会」 壱岐市:Social Good な企業とその取り組み 自治体編 #27|コラム|メンバーズ

blog.members.co.jp

 

日本でも有数の環境学者による最新刊。あとがきには、著者の地球の行く末、そして、二人のお孫さんへの思いが綴られていました。

2019年8月、アイスランドで初めて消滅した氷河があった場所に「未来への手紙」とする未来の人々に宛てたプレート設置のエピソードがあとがきに紹介されていましたが、そのアイスランドでの「未来への手紙」になぞらえた、著者のメッセージを最後に紹介しましょう。

筆者には二人の孫がいるが、この書も二人の孫への「未来への手紙」と言えるかも知れない。人類がこれまで通り緩慢で身勝手であれば、1.5℃や2℃目標どころか2060年代にも世界の平均気温の上昇は4℃を突破し、人類は壊滅的な気候崩壊から文明の崩壊に直面することになるだろう。

(中略)

人類がアントロポセン※において一致協力して惑星管理保護責任を果たすことができたかどうかを、二人の孫は知ることになるだろう。

 

※アントロポセンとは? 

www.afpbb.com

 

気候危機 (岩波ブックレット)

気候危機 (岩波ブックレット)

  • 作者:山本 良一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/01/10
  • メディア: 単行本
 
地球温暖化とグリーン経済

地球温暖化とグリーン経済