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都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

米国の進化論支持者は2割!?「ルポ 人は科学が苦手」ブックレビュー

地球温暖化や進化論など科学者の間ではほぼ合意に達していることでも、社会では論争が続く。これはある意味、不思議なことだ。科学者が言っているのだから、素直に認めればいいじゃないかと素朴に思うことがある。しかし、政治的だったり宗教的だったりする個人の思いが強いと、科学の理解が人々の間に広まっていかず、対立が続く。

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 出版される本やYoutubeの動画、ブログの記事等、改めて思うのは、地球温暖化の問題に対して、懐疑論者のコンテンツが容易にしかも大量に見つかること。つまり、地球温暖化はその原因が人間活動によるものではないこと。なぜ、懐疑論がこれまで拡がっているのか?その理由を知りたくて手にとったのが本書。

「温暖化はでっち上げ」という発言の候補者が大統領に選ばれるアメリカ。そのアメリカの「科学不信」の現場を伝え、それら反科学論者に対する情報の伝え方やコミュニケーションあり方までを伝える本書。おススメの一冊です。

 

●意思決定の判断基準は?

まずは、アメリカのギャラップ社による、アメリカ人を対象にした様々な調査結果の驚愕の内容を紹介しましょう。

 

・神が過去1万年前のある時に人類を創造した(創造論)を支持:38%

・神の関与なしに人類は数百万年にわたり進化した(進化論)を支持:19%

・地球温暖化は「人間活動が原因」と考える:64%

温暖化に関する設問の支持政党別の結果は、共和党支持者:35%、民主党支持者:89%

 

ノーベル賞受賞者を世界で最も輩出(トップのアメリカが271人に対して、2位のイギリスは87人、3位のドイツは82人、日本は6位で26人)し、個人的には、合理主義で科学万能主義と思われたアメリカ。

その結果は、科学的に既に決着した内容でも、それを信じるかどうかは、個人の知識量よりも支持政党や信仰する宗教によって決定される傾向にあること。そして、知識が豊富な人の方が、支持する情報を集め考え方が偏るためその傾向は強く、また、人は自身が考えているよりも理性的でないという事実

さらに、反権威主義の傾向が強い国民性により、反科学論は進化しているとの事。

 

「人が何かを決める時に科学的な知識に頼ることは実際に少なく、仲間の意見や自分の価値観が重要な決め手になっている」

 

●科学不信の現場とは?

タイトルにルポの文字が含まれている通り、本書の特徴は、アメリカの科学不信の現場に、筆者自らが足を運び、インタビューをしていること。

「なぜ科学者は地球温暖化に同意していないのか」という小冊子を発行(全米に30万部を無料配布、財源は全て寄付でかけた費用は1億1千万円!)するシカゴ郊外のハートランド研究所 所長や、聖書の内容に基づき、全長155メートルのノアの箱舟を110億円をかけて再現した、ケンタッキー州の創造博物舘 広報担当者への取材。

博物館来場者へのインタビュー等も掲載されていますが、ファンタジー、オカルトであり、まさに奇々怪々といった内容である意味注目です。

 

さらに、本書が素晴らしいのは、こうした事実を紹介することで終わらせずに、こうした対立する意見を相互に理解するためのコミュニケーションのあり方にまで触れていること。

 

例え相手が科学的に誤っていることを主張していたとしても、事実やデータや上から目線で伝えるのではなく、相互の共感と敬意が重要であること。

ビジネスの現場でも大いに参考になりそうです。

 

そんな中、次期アメリカ大統領選の民主党候補の一人に、元ニューヨーク市長のブルーンムバーグ氏が名乗りを上げました。

パリ協定脱退を決めたアメリカ。地球温暖化解決の観点から大いに期待です。


 

ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から (光文社新書)

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HOPE 都市・企業・市民による気候変動総力戦

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