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都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

いつやるか?ではなく、いくらにするか?「気候変動クライシス」ブックレビュー

無制約な人間の衝動ーまちがった制約を課された人間の衝動と言うべきかーこそは、現在の惨状を引き起こした真犯人だ。適切に振り分けた人間の欲望と創意工夫は、真の社会的費用を反映した十分に高い炭素価格に導かれれば、この惨状から逃れるための最高の希望なのだ。

f:id:changein:20190727083733j:plain  気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によれば、世界の平均気温は、1880年から2012年の期間に0.85℃上昇、大気中のCO2濃度は、産業革命前に比べて40%も増加しました。

※IPCCとは、地球温暖化に関する調査研究のため、世界から集まった約200人の研究者で構成される機関。2007年には、アル・ゴア元アメリカ副大統領と共に、ノーベル平和賞を受賞。

 

また、東京の30℃以上の真夏日は、現在、年間45日程度ですが、21世紀の終わりには、100日を超える、つまり年間の3割弱が、真夏日になることが気象庁により予測されています。 

日本に暮らしているとなかなか実感できない気候変動や地球温暖化ですが、台風でもないのに局地的なゲリラ豪雨が人命を奪う大災害につながったり、何よりも猛暑日が増えて熱中症の患者が増えたり・・、昔と比べて気候や気温の変化を肌感覚で感じることが出来るでしょう。 

 

本書を著した二人のハーバード大学教授は、環境科学と経済学がその分野。特に、経済学者のマーティン・ワイツマン教授は、環境分野における研究では、ノーベル経済学賞に最も近い候補の一人と言われています。

 

●地球温暖化は人間の仕業:否定論とフリーライダー


地球温暖化がもたらす気候変動は、取り返しのつかない状況になっていること。そしてその原因が、人間がもたらした結果であることがほぼ科学的にも証明されているのも関わらず、それを否定する勢力があること。この人間がもたらした結果かどうかの議論は、すでに終息していると考えていいでしょう。


I地球温暖化が人為的活動により引き起こされているかどうかのIPCCの主張

1995年:可能性が比較的高い

2001年:可能性が高い

2007年:可能性がとても高い

2013年:きわめて可能性が高い

(本書より)

 

地球温暖化の原因が人間であることは100%と確信はできないまでも、その結果を待っている余裕はなく、切迫した問題であること。

そして、もう一つの問題としてあげられるのが、フリーライダー問題。

 

近所に迷惑をかけようという活動を究極にまで推し進めたものだが、その近隣所というのは人類70億人全員だ。行動にかかる費用が、その行動で自分一人にもたらされる便益よりも高いのであれば、わざわざ行動なんかしなくていいだろう?人々の行動の総便益は、費用を上回るかもしれない。でも便益は他の70億人にも割り当てられるし、一方の費用は自分一人が全額背負う。同じ理屈が他のみんなにも当てはまる。共通の利益にかなうことをやってくれる人はあまりに少ない。

本書によれば、地球温暖化問題を児童労働や奴隷制度と同じ様に、道徳的な理由により、避ける問題とすることが理想としていますが、今はその段階にはない。

では、その解決策と今後対策はどうあるべきかというのが本書の主題となります。

 

●炭素税の導入とジオエンジニアリングのリスク

 

本書で繰り返し述べられているのが、地球温暖化を食い止めるには、温暖化ガスに排出を抑えるための炭素税の導入が現時点ではもっとも効果的な処方箋であることが述べられています。

 炭素税とは、温室効果ガスを排出した分に応じて税金を負担しようする仕組み。

 

炭素税の導入に関しては、産業界にコスト負担が生じ、そのコストが消費者にも転嫁されることが反対論者からは挙がります。しかし、地球温暖化後の気候変動がもたらす対策費用を考えればそうした議論そのものを控える必要がありそうです。

 

本書によれば、気候変動がもたらすリスクは、現時点では科学的にわからないものも多く、極めて不確実性が高いもの、そして、その被害見積もりは今よりももっと上積みされるべきと結論づけています。

 

諸外国の炭素税導入状況等はこちらをご覧下さい。北欧は炭素税導入先進国と言えます。

 地球温暖化対策税と炭素税について(環境省 地球環境局)

 

そして、本書で指摘されるもう一つの主題が、地球工学、気候工学と言われる、ジオエンジニアリングの事。

 

簡単に言うと、人口的に雨を降らせたり、太陽の光を地球レベルでコントロールすることですが、この議論が活発化したのは、フィリピンのピィナトゥボ山の噴火がきっかけとなっている様です。

噴火により、大量の硫黄が大気中に吐き出された結果、翌年、地球の気温が0.5℃下がったため。しかし、比較的低コストで出来てしますこうした策は、生物や地球環境にどういった影響を与えるのは、不透明でそうした研究も進んでおらず、副作用やリスクも大きいことが指摘されています。

 


気候変動・地球温暖化問題待ったなし。

「我々は、貧困を終わらせることに成功する最初の世代になり得る。同様に、地球を救う機会を持つ最後の世代にもなるかも知れない。」

まさに、SDGsの採択理念を今、私たちが担うことが求められています。www.jccca.org 

気候変動クライシス
気候変動クライシス
  • 作者: ゲルノットワグナー,マーティンワイツマン,Gernot Wagner,Martin L. Weitzman,山形浩生
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2016/08/26
  • メディア: 単行本
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