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都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

ロマンチストたれ!「HBR ムーンショット」 マガジンレビュー

従来の常識の枠組みから離れ、大胆な考え方からスタートすることで、新規事業成功への道筋をつけられる。また、大きな目標を掲げることで、多くの従業員や取引先を鼓舞し、ふだん、獲得できない人材を引き付けて、事業における成功確率を高めることもできるだろう

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アポロ11号が月面着陸を果たしたのは、今からちょうど50年前の7月20日。
そこからさかのぼる事10年前、アメリカのケネディ大統領が提唱したのが、そのプロジェクト実現を目指す「ムーンショット」。
 
今回の題材は、ハーバード・ビジネスレビュー 2019年8月号の中から、特集記事冒頭を飾る「ムーンショット経営で世界を変える」から。
 
筆者は、銀行マンを経て、ヒト型ロボットをグーグルに売却後、シリコンバレーを拠点に、世界の水道管劣化という全世界共通の社会課題解決に取り組むために、Fracta社を創業。

その連続起業家が説く「ムーンショット」とは何か?

●ムーンショットの要素と日本での取組み
 
記事の中で紹介されているムーンショットに欠かせない要素とは以下の3点。
 
・人々を魅了し奮いたたせるもの
→ワクワクする未来を人々に感じさせるもの
 
・信憑性のあるもの
→夢物語ではなく、技術トレンドを見極めたもの
 
・創意あふれる斬新なもの
→過去の延長線上ではなく、新しい世界を感じられるもの
 
アメリカでは、グーグルグラスやグーグルカーのプロジェクトを立ち上げたグーグルを中心として民間企業が中心ですが、日本では、国の研究政策での議論が中心との事。
 
首相官邸のページに掲載されているプロジェクト、「ムーンショット型研究開発制度に係るビジョナリー会議」は、今年度立ち上がり、すでに活発な議論が進められている様です。
 
ちょっとした驚きが、それら議事をまとめるために、グラフィックレコーディングも採用され、Webサイトでも共有されていること。

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首相官邸Webサイトより

完全版を是非、Webサイトでも確認してみて下さい。

 

そうした中、記事の中で、日本企業の取組みとして紹介されるのが、総合商社の丸紅でした。

 

2030年に向けた長期的な企業価値向上を追求することを目標に、今後3年間で新規投資を9,000億円行うというもの。その中でも、

・5G、デジタル技術、ブロックチェーン

・次世代金融サービス事業

等の丸紅としては未知の領域に2,000億円を投じ、しかも、その範囲の投資の関しては、3年間、利益に貢献しなくてもいいという経営判断がなされていること。筆者はそれを「ムーンショット経営」として評価できるとしています。

 

●経営にムーンショットを取り込む

 

では、民間企業がムーンショットを企業経営に取り込む際のポイントは何か?

ここでは、筆者が挙げるいくつかのポイントを紹介しましょう。

 

・ビックシンカーであること

もともと銀行マンだった筆者は、企業再生に関わっていたそうですが、経営再建に求められるることは、コスト構造の見直しと売上のセグメントの見直し。つまり、単年または、数年程度の改善を見込むことは出来ますが、画期的なイノベーションを起こすことはできず、そうした企業再生が物足りなくなって、自らが事業を創造する立場へと転身したとの事。

そこで必要なのがムーンショットのように考えるということだ。3ヶ年事業計画のスパンではなく、10年後にどうありたいかを強烈にイメージし、思考の枠組みを広げていく。

 

・成長を促すコーポレートガバナンスであること

特に日本企業は、ガバナンスの強化のより、取締役会や監査役、社外取締役等は、リスクマネジメントの観点から、社長のブレーキ役になっていることを指摘しています。

リスクに寛容で成長を希求するガバナンスの体制をどう構築するのかが、ムーンショット成功のカギとなるだろう。

 
・ロマンチストであること
ムーンショットのアプローチは、10年後を見据えたワクワクする未来を考えること。もちろんそれは、ファンタジーとはならない技術的裏付けがあることが求められます。そして、ムーンショットは、これまでのケーススタディを参考にしたり、フレームワークを用いる従来のMBA的な経営アプローチとは異なるものであるということ。
ムーンショット経営とは、「こういうことを世の中に起こしたい。そのためにはこの技術が必要だ」と着想し、10年越しの大きな目標を掲げ、そして大きな予算措置を講じ、その目標の実現に邁進していくというアプローチなのである。
 
 
ムーンショットとは、未来を描き、10%の改善ではなく、10倍を目指すこと。
それは、エクスポネンシャル思考であり、MTP(Massive Transformative Purpose:野心的な変革目標)、バックキャスト思考そのものでした。
過去の以下記事もご覧下さい。

 
最後に、人類による月面着陸計画の発表後、ケネディ大統領のライス大学での講演内容を紹介しましょう。
我々が10年以内に月に行こうなどと決めたのは、それが容易だからではありません。むしろ困難だからです。この目標が、我々のもつ行動力や技術の最善といえるものを集結し、それがどれほどのものかを知るのに役立つこととなるからです。その挑戦こそ、我々が受けて立つことを望み、先延ばしすることを望まないものだからです。そして、これこそが、我々が勝ち取ろうと志すものであり、我々以外にとってもそうだからです。