Marketing They Are a-Changin'

都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

入口はアート思考から「右脳思考」ブックレビュー

結局、人間を動かすのはそれが正しいか、間違っているか、あるいはやるべきかどうかという理屈、すなわちロジックではない。やりたいとか、面白うそうとか、やらないとまずいなといった気持ち、すなわち感情である。

f:id:changein:20191229163840j:plain

ボスコンの日本代表を経て、早稲田大学ビジネススクール 教授を務める著者による右脳を働かせることの重要性を問う本書。

世の中に溢れる「右脳」のキーワードが含まれるビジネス書の中で手に取ったは、左脳やロジカルシンキングの本流であり権化の様な著者が著していることに興味を持ったから。

 

 

本書では触れられてはいませんが、右脳思考の起点と終点では、「アート思考」が重要であること、そして、右脳思考を育むためには、「VTS(Visual Thinking Strategies)」「対話鑑賞」が有効な手段の一つとして確信できたことがこの年末最大の収穫となりました。

 

●右脳をどこで活用するか?

論理立てて整理され腹落ちしたのは、仕事のプロセスにおいて、どのフェーズで右脳を使うことが重要かの解説をしている箇所。

 

以下プロセスにおいて、インプットとアウトプットでは、右脳が情報に重要であるとしています。

 

●第1ステージ~インプット

情報収集して課題を見つけること、仮説を立てること

 

●第2ステージ~検討・分析

課題を特定、整理、分析し、解決策を見つけること

 

●第3ステージ~アウトプット

解決策から意思決定を行い、実行すること

 

まずは、インプットのプロセスでなぜ右脳を働かせることが重要なのか?

それは現場や人の行動を観察して疑問を感じて課題を発見することが重要だから。このステージの右脳思考とは、ヒューリスティックス分析であり、デザインシンキングそのものと言えそうです。

左脳:ロジカルシンキング、右脳:デザインシンキング に置き換えれば、それぞれの優位性や両者を行ったり来たりすることの重要性が良く理解できるでしょう。

 

また、アウトプットのステージでは、なぜ右脳が必要かと言えば、人は理屈よりも、感情で動くから。そして、相手がどう思っているのかを理解する必要があり、まさにそれは、右脳を働かせる必要があるとしています。

 

●右脳に訴え「感情」を動かすファクターとは?

では、ロジカルな考え方は、ビジネスの基本として必要であることに加えて、実行に移すための説得材料として、右脳思考による感情に訴え、人を動かすファクターとは何か?

本書では、

1:論理性

2:ストーリー

3:ワクワク・どきどき

4:自信・安心を与える

 の4点を挙げています。

さらに、最も重要であるとする、2つ目のストーリーを豊かにする方法としては、

立体感:イメージできる

現実感:実現できそう

安心感:やってみたい、自分でもやれそう

を3つのポイントとしています。

私はビジネスでもます「やりたい!」から考えることがあってもよいと思う。人間誰でも、自分で好きなことや自分が思いついたことは一所懸命やるが、人から言われたことやどうしてもやらなくてはいけないことには力が入らない。

 つまり、起点となる課題発見と実行へ移すそのタイミングは、右脳思考に加えて、まさにアート思考が重要というわけです。つまり、自身の信念や信条、企業に置き換えれば、パーパス経営と合致するものと言えます。

前述の第1から第3のステージに至るビジネスのプロセスになぞれば、第1ステージの入口と第3ステージの出口では、本当にやりたいと言える個人の想いが感情を動かし実行に移すことが出来る言えるでしょう。

 

●右脳を働かせるために?

本書後半では、右脳を働かせるための3つのポイントが、

観察する・感じ取る・勘を働かせる:「観・感・勘」

が重要としています。

本書では、普段の生活の中でのこうした行動をどう意識して鍛えるのかが解説されていますが、こうした能力を育むためには、美術作品を題材にグループで対話を行う 「VTS」(Visual Thinking Strategies)や「対話鑑賞」が最適であると改めて確信しました。

 

私が所属する会社でも、デンマークのデザインシンキングの手法を取り入れたワークショップを数多く開催していますが、最近スタートのが、ある美術館との協力により、ワークショップの前半にこの「対話鑑賞」を組み込んだプログラムを提供する試み。

「観・感・勘」の3つのポイントを働かせ右脳を活性化させるための「対話鑑賞」は有効な手段の一つと言えるでしょう。

美術館での「対話鑑賞」を取り入れたデンマーク流デザインシンキング・ワークショップ。興味を持たれた方は是非、お声掛け下さい。

 

なぜロジカルシンキング一辺倒ではダメで右脳を働かせる必要があるのか?

平易で分かりやすく、そしてロジカルにまとめられた一冊でした。

 

※本書では「ネスカフェ・アンバサダー」のビジネス立上げに関する著者の予測が述べられていました。アンバサダーの仕組みは、以前に私がネスレの方へインタビューを実施しています。そのビジネス立上げのきっかけは東日本大震災と社内のビジネスコンテスト。こちらもご参照下さい。

blog.members.co.jp

 

右脳思考

右脳思考

  • 作者:内田和成
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2018/12/26
  • メディア: 単行本