Marketing They Are a-Changin'

都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

カスタマー・エンゲージメントの定量化を目指すCXサーベイ 2

優れた顧客体験提供のポイントは、デジタルチャネルとコールセンターのサービス提供における一貫性とスマホ対応、自行の提供価値アピール

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カスタマー・エンゲージメントの定量化を目指すCXサーベイ 2


<金融機関対象 住宅ローン借換え業務調査(後編)>

今回は、前々回のブログでお伝えしていました、金融機関を対象にした、住宅ローン借り換え業務の顧客体験調査の結果をお伝えします。

調査全体のスコアは、スマホ・WebのCX、コールセンターのCXに分けてスコア化していますが、Webサイトやコールセンター等、単一チャネルの評価ではなく、オムニチャネルの観点から、想定される顧客アクションに沿った調査であることがCXサーベイの特徴です。

CXサーベイ評価結果気になる総合ランキングは、以下の通りとなります。

【総合ランキング】
第1位:新生銀行
第2位:りそな銀行
第3位:ソニー銀行

また、チャネル別のランキングは以下の通りとなります。

スマホ・Webコンテンツ部門】
第1位:りそな銀行(67.4)
第2位:新生銀行(62.2)
第3位:みずほ銀行(52.5)

【電話応対】
第1位:新生銀行(63.9)
第2位:住信SBIネット銀行(61.2)
第3位:ソニー銀行(59.1)

※括弧内は、偏差値換算スコア

今回の調査を通して、私なりに感じたことを3点、挙げてみたいと思います。

1:スマートフォンソーシャルメディアへの対応差異

前々回のブログでも述べた様に、低金利時代の今、一般生活者が自分が契約している住宅ローンの金利が気になって、自行や他行のサイトをちょっと調べようと思った場合、皆さんはどんなアクションをしますか?
そう、恐らく通勤中の電車の中や自宅のリビングでちょっとした何かのついでにとりあえずはスマホで内容を確認することかと思います。
今回の調査は、起点として、スマホを重視することを前提に進めていますので、まずは、銀行名と住宅ローンのキーワードを、スマホGoogleサイトから検索し、検索結果からのアクセス先をチェックすることからスタートしています。

その結果、スマホでストレスなく情報収集できたのは、総合1位と2位の新生銀行りそな銀行のみ。他銀行は、スマホに対応していても一部のコンテンツのみであったり、ある2行は、全くスマホ対応がなされていない結果となりました。

スマートフォン保有率が75%を越えています。(総務省 H28年度版 情報通信白書より)現在の一般消費者のデバイス環境を考慮すると、もはやスマホ対応は必須であり、CXの起点として最も重要な顧客接点であると考えていますが、スマホ対応へのスタンスは各行によって温度差のある対応となりました。
同様のことが、ソーシャルメディアへの対応にも言えます。


2:デジタルチャネルとコールセンター応対の一貫性

今回の調査は、オムニチャネルでの統合的な顧客対応を前提として、コールセンターへのミステリーコール実施の際は、あえてWebコンテンツに記載されている内容に関しても問い合わせを実施しています。
Webコンテンツの掲載内容とコールセンターのコミュニケーターが伝える内容に、ランキング上位行は一貫性があり、整合性のとれた対応をなされていたのがとても印象的できた。

一方で、下位行は、住宅ローンの借り換えのメリットとして、返済金額が1,000万以上あること、借り換えの金利差が、1.0%以上あることなど、そのポイントが明記されているにも関わらず、ミステリーコール調査により、コミュニケーターがスムーズにその案内が出来なかったり、保留になったりするケースも見受けられました。


3:コミュニケーターによる自行提供価値の把握とアピール

多大な人的リソースを必要とし、呼量削減によるコスト削減は、大企業のコールセンター運営にとって、最大かつ永遠のテーマと言えます。一方で、営業店や渉外以外では、リモートチャネルではあるものの、生身の人間が対応するとても重要な顧客接点となります。

全ての銀行が、電話応対のエチケットやマナーに関わる基本的なコミュニケーションスキルは及第点の結果となりましたが、今回の調査で上位行と下位行での大きな違いは以下の2点と考えています。

上位行のコミュニケーターは、自行のサービス内容を理解し、サービスの特色や強みをきちんと伝えられていたことでしょう。借入れ金利以外に、なかなかサービスの差別化を図りにくい金融サービスであるからこそ、顧客の事前期待を超え、課題解決を果たしていると言えます。
また金利差以外に、差別化が図りにくく、他行との違いがわかりにくい商品であるからこそ、顧客とのコミュニケーションにおける積極的な対話姿勢やアクセスビリティの整備が、総合スコアに表れたと
言えるでしょう。

今回の調査を終えて、新生銀行の担当部署の方々には、高スコアの実現のための秘訣の様なものをヒアリングしていますが、まさに該行は、組織または、グループ会社を含めて、様々な施策を実行していました。つまり、なかなか大企業では実現できていない複数チャネルを統合化した顧客体験向上のための様々な取り組みがなされていました。詳細は追って、本ブログでも紹介させて頂きます。

また、12月末に発売される顧客体験に関わる書籍でも、カスタマー・エンゲージメントの定量を含めた調査手法を解説させて頂きました。ご興味のある方は是非、ご一読下さい。

UX × Biz Book ~顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン~


※今回の調査結果は、この度、ニュースリリースとしても発表させて頂きました。
http://www.members.co.jp/company/news/2016/1201.html