Marketing They Are a-Changin'

都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

挑まない・比較しない「巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念」ブックレビュー

他社との比較がマーケティングの出発点であるとしたら、お客様に喜んで頂けるマーケティングなど展開できない。そんなマーケティングはおぞましいとすら思いました。だから自社の歴史、文化、伝統を生かして、ミッション(使命)に忠実に、夢の実現を通してカスタマー(顧客)を魅了し、HDJの生存を維持していくために、原点からマーケティングを考えることが大切だと信じました。

f:id:changein:20191013152233j:plain

本書を手に取ったきっかけは、以前にアップした、よなよなエールで有名なヤッホーブルーイング社長の著書ブックレビューでも触れましたが、経営戦略を考える上で徹底的に研究したのが、バイクメーカーのハーレーダビットソンであることを知ったこと。

www.mhagiya.com

 

ヤッホーブルーイングにとっての巨象が、アサヒやキリン、サントリーであるとすれば、ハレーダビットソンジャパン(以下、HDJ)の巨象は、ホンダやヤマハのこと。

本書は、トヨタ自動車から、1990年、HDJの代表取締役に就任、2008年に退任するまでの19年間、社長を務めた奥井氏によるもの。

奥井氏のHDJの主な実績は、長期低落を続ける日本のバイク市場で、一貫して成長を続けたこと、また、2001年以降、アメリカ製自動車(GM、フォード、クライスラー)と比較しても輸入登録台数でNo.1の座を維持したこと等、華々しい実績を残しています。

f:id:changein:20191013152204j:plain

本書より

●凡事の徹底が非凡を生む

本書で繰り返し述べられるキーワードは「凡事」。凡事とは、当たり前、ありきたりなこと。そして、その「凡事を非凡なレベルにまで徹底すること」、そして、その「凡事」で構成されるきめ細かさが大きな格差を生むということ。

  • マーケティングにおける凡事
  • セリングにおける凡事
  • 顧客政策における凡事
  • CSにおける凡事
  • チャネル政策における凡事
  • 社内コミュニケーションにおける凡事
  • ワークスタイルにおける凡事

 が各章で展開されています。

 

●マーケティングにおける凡事とは

日本製のバイクと比べて圧倒的に高価格で、燃費も悪い、重いし扱いにくく、広告や販売促進にかける予算も限られるといった状況の中で、HDJがとった戦略は、実用よりも趣味としての価値を訴求すること。

ハーレーの存在意義を改めてはっきりと認識して、その存在意義をさらに広く、深めていくことが日本でのハーレーのマーケティングを展開する上で大切なこと。この存在価値の確認はHDJにとって極めて重要でした。

存在価値を確認すること、これはサイモン・シネックのゴールデン・サークルの事ですね。

www.mhagiya.com

 

そして、ヤッホーブルーイングがHDJの研究を通した成果として実践していると思われる、奥井氏が言うところの「ライフスタイル マーケティング」。

乗る楽しみ、知る楽しみ、出会う楽しみ等、10の楽しみをイベント等を通して、モノ軸からコト軸として、感動体験として顧客に提供していくというもの、まさにヤッホーブルーイングの戦略そのものでした。

 

そして、HDJが目指したのは、実用よりも趣味としての価値を徹底的に提供しようというもの。

これは、まさにこちらの「ニュータイプの時代」にも述べられていることにも合致することでした。

www.mhagiya.com

こちらの本では、「役にたつ」と「意味がある」のマトリックスにより、自動車メーカーを分析していましたが、ニュータイプの時代で示される、フェラーリやランボルギーニ、つまり、意味があるカテゴリーキラーがハレーであると言えるでしょう。

 

本書が発行されたのは、今から9年前。ビジネス書としては古いものですが、その内容は、ここ最近ブックレビューでアップした様々なブックレビューのエッセンスが散りばめられていました。過去のレビューコンテンツが思い出される、古くても内容は色褪せない、そんな一冊でした。

 

巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念

巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念