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都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

機会か?淘汰か?「ギグ・エコノミー襲来」ブックレビュー

企業経営者が「どうすれば組織をもっと良くできるか」を追求してきたのだとするなら、私たちは早急に「どうすれ自分たちの仕事をもっと良くできるか」を追求していく必要がある。

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2000年代初頭に日本でも出版された「フリーエージェント社会の到来」が新しい働き方を予見する書であるとすれば、今回紹介する本書は、クラウド・コンピューティングやシェアリング・エコノミーが進展した今、新しい社会における働き方と生き方を提案する解説書であり実践書と言えるものと言えるでしょう。しかし、残念ながら、その内容はモヤモヤ満載の読後感となりました。

 

●ギグ・ワーカー、ギグ・エコノミーとは?

アメリカでは、フリーランサーや個人事業主等の「ギグ・ワーカー」は、すでに4,000万人、自由度や柔軟性を重んじるミレニアル世代がその働き方を志向するケースが急増しているとのこと。

 

「ギグ・ワーカー」がフリーランサーや個人事業主であるとすれば、タイトルにもある「ギグ・エコノミー」とは何か? 本書によれば、

従来の雇用とは異なる一時的な仕事を不定期でする人々が増えるようになったことから生まれる経済的価値

との事。つまり、ギグ・ワーカーを支えるために進化した、企業やビジネス、そして社会の仕組みのことであるとしています。

 

そして、アメリカで、ギグ・ワーカーと呼ばれる層が増えた背景には、技術が急速に進展することでビジネスのサイクルも縮まり、企業や市場が求める人材が不足してきたから。そして、

・社会やビジネスの変化に対して迅速に対応する必要があること

・専門的な人材の確保が求めれること

・社外の第三者の意見が重要になっていること

により、企業がオンデマンド型の人材を求めていることが背景にあるとしています。

 

 

●企業のサプライチェーンから人材のサプライチェーンへ

冒頭で本書は実践書であると述べましたが、それは、ギグ・ワーカーが個人事業主として成立するための心構えや自己のブランディング、報酬の設定やビジネス開拓に関することまでがアドバイスされているから。

また、一般的にハリウッド型と呼ばれるプロジェクト単位でギグ・ワーカーが活躍する場を整備するには、人材のサプライチェーンが重要となり、それを支えるためのソリューションやギグ・ワーカー人材のD/Bやプラットフォームを提供する企業も重要な役割を果たすことが述べられています。

本書の最後に、60社以上の主要や人材紹介会社とプラットフォーム企業が一覧で掲載されていますが、各社がネットワークする人材の規模や事業内容をざっと目を通せたことが、本書の一番の収穫だったかもしれません。

 

●個人的にはオススメしません

個人の専門スキルを磨き、個としての能力をオンデマンド人材として社会に活かすこと、そして、以下の「新しい労働者のパラダイム」の箇所は共感できたものの・・

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オンデマンド・ワーキングと言えば聞こえはいいですが、企業側の視点に立てば、必要な時にだけ必要な人材を確保できるということ。今、日本でも社会課題の一つに挙げられる、非正規雇用や有期雇用の従業員同様、ギグ・ワークスタイル化の促進は、結局、企業にとって都合の良い駒としての労働力確保に拍車が掛かるのでは、また、専門性の高いギグ・ワーカーとして成立する人材がどこまでいるのか? モヤっとした違和感を覚えたというのが率直な感想でした。

 

最終章には、ギグ・エコノミーの未来と称して、成功するギグ・ワーカーの特性として、13項目が挙げられています。しかし、ギグ・ワーカーに限らず、こうした特性を持っていれば、ビジネス・パーソンとしてはもちろん、どんな分野でも成功が約束される、そんな代物でした。

 

今回は消化不良の一冊となりました。残念 (T_T)

ギグ・エコノミー襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル

ギグ・エコノミー襲来 新しい市場・人材・ビジネスモデル

  • 作者: マリオン・マクガバン,斉藤裕一
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2018/11/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

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