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都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

デンマークに学ぶ 『HYGGE 365日 「シンプルな幸せの作り方」 』 ブックレビュー

現実を直視すると、私たちの生活はバラ色の天国というわけではありません。しかしヒュッゲとは、むずかしい状況の中でも、今持っているものを上手に活かすことであり、日々の生活にしっかりと根を下ろすことなのです。(本書より)
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国連が毎年発表する幸福度調査。
世界約150カ国、各国3,000人程度を対象とした調査で、先進国の中では毎年下位レベルの日本。

過去、5年間の日本のランキングは以下の通り。
2015年:46位
2016年:53位
2017年:51位
2018年:54位
2019年:58位

毎回ニュースでは、日本のランキングの低さが取り上げられますが、調査方法を調べてみると、以下設問に対して(1は除く)、0~10の値からなる各個人の回答の数値の各国1,000人程度の平均値を求めたもの。

1.人口あたりGDP
2.社会的支援(ソーシャルサポート, 困ったときに頼ることができる親戚や友人がいるか)
3.健康寿命
4.人生の選択の自由度(人生で何をするかの選択の自由に満足しているか)
5.寛容さ(過去1か月の間にチャリティ等に寄付をしたことがあるか)
6.腐敗の認識(不満・悲しみ・怒りの少なさ、社会・政府に腐敗が蔓延していないか)

何をもって幸福とするかは、国が置かれている環境や個人の価値観によって異なるため、単純に数値化することは難しいかと思いますが、日本のランキングの低さ同様、毎回クローズアップされるのが、上位を占める北欧諸国。

2017年
1位:ノルウェー
2位:デンマーク
3位:アイスランド
4位:スイス
5位:フィンランド

2018年
1位: フィンランド
2位: ノルウェー
3位: デンマーク
4位: アイスランド
5位: スイス

2019年
1位:フィンランド
2位:デンマーク
3位:ノルウェー
4位:アイスランド
5位:オランダ

過去3年間の上位3ヶ国の常連は、フィンランドデンマークノルウェー。北欧諸国は税金の高さと引き換えに、社会保障制度の充実が幸福度と関連していることが指摘されますが、今回のテーマは、デンマークの 「ヒュッゲ」。

デンマークのこと、そして、デンマーク人が重視する「ヒュッゲ」とは何か?そして、具体的にヒュッゲを作り出すためには?幸せの国 デンマーク コペンハーゲンシンクタンク ハピネス・リサーチ研究所  CEOによる本書を紹介します。

 

 

この言葉は、「満ち足りること」という意味のノルウェー語から来ています。「ヒュッゲ」という言葉がはじめて書物にあらわれるのは1800年代はじめのことで、「満ち足りること」 「幸せであること」 と 「ヒュッゲ」 につながりがあるのは、けっして偶然ではありません。

デンマークとほかの北欧諸国のちがいを解き明かすキーワードは、「ヒュッゲ」 かもしれません。



デンマーク人はなぜ幸福なのか?

最大の要因は、本書でも社会福祉国家であることが挙げられています。国民誰もが医療費や大学教育も無料、失業しても手厚い給付金がもらえること。これらの社会整備により、不安や心配、ストレスが最小限に軽減されているのがその要因。

では、同様の他北欧諸国とどう違うのか? そのキーワードが、「ヒュッゲ」 というわけですが、具体的なライフスタイルや価値観は何かというと、以下の2点が挙げられています。

一つめは、ワークライフがうまく取れているおかげで、家族や友人と過ごす時間を十分に持てていること。
「よりよい暮らし指標」 によれば、他国と比べて、「自由に使える時間が多い」事、そして、「穏やかで安らかな気持ちである」 と考える時間が最も長かったのもデンマーク人との事です。

もう一つは、仲間とおいしい食べ物を分かち合い、感謝の念を持つという、シンプルな喜びを味わうこと。

ヒュッゲの本質はシンプルな喜びを味わうことですから、日々の暮らしに感謝する助けにもなるでしょう。ヒュッゲはその瞬間を思いきり楽しんだり、将来の楽しい計画を立てたり、幸せを保ちつづけたりする手立てにもなります。

そして、冒頭の指摘の様に、主観的な個人の幸福度を定量化し評価することは難しいのですが、著者によれば、幸福度を測り、生活の質を数値であらわそうとする際に、幸福の3つの側面を考える必要があることを指摘しています。

●生活にどの程度満足しているか?

→生活にどの程度満足しているか?、どのくらい幸せを感じているか?・・・

●気分や快楽について、日ごろどんな感情を抱いているか?
→怒りや悲しみ、孤独を感じるか?、笑い声をあげたか?・・・

●ユーダイモニア(目的意識、生きがい)を持っているか?
→人生の目的や生きがいを見つけて生活しているか?・・・


●ヒュッゲを作り出すために

本書ではヒュッゲを作り出し、お膳立てするための具体的な手法が示されます。

まず本書で示される、「シンプルな幸せ」をつくる「ヒュッゲのルール10ヶ条」はこちら。
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本書より

ルールの一つめが「雰囲気」で、キャンドルのイラストが添えられていますが、ヒュッゲを作り出す重要なポイントの一つが「あかり」を演出するキャンドル

世界初の照明アーティストと称され、照明器具を設計した、ポール・ヘニングセンを輩出している様に、デンマーク人があかりにこだわるのは、10月から3月までは日照時間が短かかったり、1年間の雨の日が、平均179日も占め、自然の光を浴びることすくないからとの事。

ヒュッゲは、寒さの厳しい冬、雨の多い日々、分厚いベルベットのような暗闇をどうにかする対処法なのです。ヒュッゲは1年中暮らしと共にありますが、どくに冬場は生活に欠かせないものになります。生き抜くための手段と言いかえでもいいでしょう。

そのヒュッゲを作り出すもっとも重要なものがキャンドルというわけです。
デンマーク人にヒュッゲと聞いて思い浮かべるものは何か?と質問すると、85%以上の人が「キャンドル」と答えるそうです。

デンマーク人のキャンドルの消費量は、ヨーロッパで一番多く年間6キロで、2位のオーストリアの2倍。日本人にもなじみのある人工的な香りを含むアロマキャンドルは好まれないそうです。

そして、もう一つのポイントが、人とのふれあい。自宅で家族や友人とリラックスしてかけがえのない時間を過ごすこと。日本で一般的に考えられるホームパーティーと異なり、本書を読んでイメージできるのは、もっとシンプルで気軽な雰囲気の演出を基本としたおもてなし。

 

デンマーク人のヒュッゲの基本的な拠点は自宅。ちなみに、一人当たりの居住面積が最も広いのが、51平米のデンマーク(2位:スウェーデン、3位:イギリス)。住環境が広いから気軽に友人を招くことが出来るのか、自宅を拠点とするヒュッゲが重要とするから、自宅が広くなったのかは不明ですが、ヒュッゲな空間を作るため、デンマーク人は、お金や労力を厭わない様です。

ヒュッゲのカギは、人と一緒にいること。「社会とのつながりが人の幸せの本質である」という考えは、私のように「幸福」について研究している研究者や科学者の間で共通の見解となっています。


本書ではこの他にも、ヒュッゲ実践のための方法として、料理のレシピや、場を演出するための食べ物やインテリアグッズも紹介や、コペンハーゲンでヒュッゲを体感できる現地の紹介が旅行ガイドブックさながらに紹介されています。

センスの良い表紙のデザイン、全ページを通して掲載させる美しい写真やイラスト。アマゾンではキンドル版も発売されている様ですが、これは絶対に単行本版を入手すべきでしょう。
いつまでも手元に置いておきたいと思える装丁であり、愛着感のわく、そしてデンマークに行きたくなる1冊でした。

 

ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方 (単行本)

ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方 (単行本)