Marketing They Are a-Changin'

都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

モノから結果の提供へ 「サブスクリプション」 ブックレビュー

「人が何かを買うときの方法は様変わりした。消費者はこれまでと違う期待を持っている。モノを所有することよりも結果を得ることを好む。標準化されたものではなく、カスタマイズされたものを好む。売り手の都合で行われる計画的陳腐化ではなく、絶えざる改善を望んでいる。これまでとは違うスタンスで企業に関わっていこうとしている。製品ではなくサービスを求めている。」(本書より)
サブスク表紙

商品やサービスを売り切りで提供するのか、年間契約やレンタル契約により、継続的に商品・サービスを提供するのか。つまり、売上を上げる方法として、フロー収益モデルとストック収益モデルの2種類がありますが、最近注目されるサブスクリプションモデル。

 

昔から、新聞や雑誌の講読やダスキンの様な清掃用品のレンタルサービス等、サブスクリプションに相当するサービスの提供方法はたくさんあるわけですが、従来のストックモデルととう違うのか?

 

それは、製品から顧客、そして価値主導へと移行した、フィリップ・コトラー氏が提唱するマーケティングの進化に合わせたサービスや便益の提供方法でした。



●新しいビジネスモデルとして広がるサブスクリプション

 

本書を読んで感じたのは、サブスクリプションモデルが、様々な業界で広がっていること。最近は、日本でも定額制のカフェやレストランや、トヨタが2019年からスタートしているKINTO、その他、スーツやネクタイでのサービスが提供されていますが、海外でもトラデッショナルな業界からデジタル業界まで、広くサービスが提供され支持されていること。
ポルシェやボルボ等の自動車メーカー、アドビをはじめとするソフトウェア会社はもちろん、最近では、ルーター機器を提供するシスコや日本企業のコマツ、さらに、飛び放題を保証する航空会社SURF AIR等。
 
そして、サブスクリプションモデルで最も恩恵を受けているのは、製造業との事。それは、IoTにより収集したビックデータにより、顧客一人j一人と向き合い、製品の改善や進化を実現し、単体としての製品ではなく、システムとして、顧客が望む結果を提供できるから。

 

商品が売れていれば、誰が買っているかを気に留める必要もなかった、マーケティング1.0の時代から、今日の企業は、以下の新しい問いを自問し始めているとしています。
  • 顧客と長期的な関係を築くために何をすればよいのか?
  • 所有ではなく結果を期待する顧客に何をすればよいのか?
  • とうすれば新しいビジネスモデルを生み出せるのか?
  • どうすれば顧客に継続的な価値を提供し、定期収益を増やせるのか?

 

フェンダーの新しいビジネスモデル

 

少しでもギターをかじったことがある人なら誰でも知っているアメリカの老舗メーカー「フェンダー」。最近では、同様の老舗メーカー「ギブソン」が経営破綻となってしまいましたが、ここでは、本書の中でも個人的にとても印象的だった、フェンダーのモデルを紹介しましょう。

 

本書によれば、ギター業界全体の売上は、過去10年で2/3まで減少、フェンダーの売上の半分は、初めてギターを持つ初心者で、その90%が1年以内にギターを触るのをやめてしまうとの事。
そうした中、フェンダーが2017年7月からスタートしたのが、オンラインによる定額制のギターレッスン動画コンテンツ(Fender Play)の提供。アプリでは、レッスンの進捗状況も管理できる様です。残念ながら日本ではまだ提供されていませんが、有名老舗メーカー自らが提供するレッスンサービス、ギター弾きにとっては、魅力的なキラーコンテンツと言えるでしょう。
 

fender.com_play 

Fender社 Webサイト

 

さらに、翌年にはスマホのギターチューナーを提供。ギターチューナーとは、ギターの弦の音程を調整するために使う小型のデバイスですが、アナログの針のものから、デジタルチューナーに進化し、現在では、アプリストアで多くのスマホチューナーを手軽に入手することができます。

 

では、フェンダーがアプリのスマホチューナーを提供したことによって、何が出来るかと言えば、膨大なギターユーザーのデータを集められ、それをマーケティングやモノ作りに反映できること。

 

「何分かけてチューニングしているか。何人がチューニングをしているか、どの機種をチューニングしているか、うまくチューニングできたかなどがわかります」 フェンダー社 イーサン・カプラン CPO(最高製造責任者)コメント


「代理店のマージンや販売本数ではなく、サブスクライバー・ベースとエンゲージメントに意識を向けた。それは、顧客をギターの所有者として見るのではなく、ギター奏者として、生涯にわたる音楽愛好家として見るということだ」 フェンダー社 アンディ・ムーニーCEO コメント


サブスクリプション化できないものはない

 

そうは言っても、メディアやソフトウェア等、デジタル化できたり、IoTと組み合わせられるものであればサブスクリプト化も可能だけど、なかなかそううまくは行かないよね・・、そういった疑問に著者はこう答えています。

 

サブスクリプション化できないものはない。なぜなのかを種明かししよう。製品が提供するサービスのレベルについて契約すればよいのである。それはすべてに応用できる方法だ。冷蔵庫を提供するのではなく、新鮮で冷たい食品の提供を保証する。屋根ではなく、太陽エネルギーの供給を保証する。掘削機そのものではなく、定量の土砂の掘削を提供するということだ。

 

思い出されるのは、マーケティングのあの格言ドリルを買う人が欲しいのは「」である」
あなたの会社で提供できるサブスクリプションモデルはなんだろうか?

 

 

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル

サブスクリプション――「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル