Marketing They Are a-Changin'

都内在住ビジネスマン。CSV、サステナビリティ等に関することを 2019.5 Livedoor Blogから引っ越してきました。

全てを受け入れる良心 「ダイバーシティとマーケティング」 ブックレビュー

「正しさは一つではない」「私は違うけど、あなたの考えも良いよね」「自分が正しくないと思うことを相手に対してしない」などのダイバーシティ視点の良心が、ビジネスパーソンや企業(トップ)に問われるのではなかろうか。

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SDGsの目標5にも掲げられるジェンダー平等。今回採り上げる「ダイバーシティとマーケティング」、述べられるのは、性的マイノリティであるLGBTに関わること。そして、LGBTをどう企業戦略に活かすかというのがテーマの本書。

まずは、本書でも引用元として、度々挙げられる、電通のLGBTに関する調査(全国20歳~59歳の6万人を対象)によれば、

  • LGBT層に該当する人:8.9%
  • 「LGBT」という言葉の浸透率:68.5%
  • LGBT層をサポートする企業の商品・サービスを購買・利用する:53%

LGBTにフレンドリーな企業であることが購買意欲に繋がり、数兆円と言われる市場規模が見込めるのであれば、企業はマーケティング施策としてLGBTを進めるべき。では、どう進めるのかを期待して読み進めたわけですが・・


●企業自らの実践に勝るものなし

読後の感想は、LGBTをマーケティング戦略として活かすには、一朝一夕に難しいということ。それは、本書でも紹介される、著者知り合いの性的マイノリティーの方へのインタビューのコメント。

Q:「私たち○○○社は、LGBTへの支援の一環として、□□□に協賛しています」と堂々とアピールする会社があったら、どう思う?

 A:正直言ってあまり良い気はしない。どうせ広告の口先だけで、うさん臭い。全員がカミングアウトしているわけではないので、そんなことを謳っている企業をむしろ敬遠する性的マイノリティーも多いはず。

コンプラ違反のブラック企業がCSVを進めても説得力もなく、支持されないのと同様、LGBTをマーケティングとして活用するのであれば、企業としての理解に加えて、社内の人事制度や就労面でのルール等、企業自らが実践していなければ、LGBTへの支持を声高々に叫んでも何の説得力もないということ。

そういった意味では、マーケティング戦略以前に、人事制度や採用基準、就労ルール等の整備が必須、つまり、人事部門や総務部門に本書のヒントがありそうです。


●実践する企業からのヒント

本書後半には、マーケティング事例として、ライフネット生命保険、ラッシュジャパン。ネオキャリア、ホテルグランヴィア京都の4社インタビューが掲載されていますが、その中で、ヒントとなるコメントを紹介しましょう。

ライフネット生命保険:顧客セグメントはその方をどの一面で切り取るかで変わります。LGBTというセグメントであることも、その方の一部ではあるけれど、すべてではないはずです。そう考えれば、選択肢を増やすということがダイバーシティ・マーケティング参入の基本となる考え方ではないかと思います。

ラッシュジャパン:LGBTも含むダイバーシティ施策というのは、やるメリットよりも、やらないリスクが大きく、得られるものより失うものの方が大きいものなのだと思います。働きにくい環境にあることで20人に1人いるといわれるLGBTの人たちが、会社で長く働けないという環境になるかもしれないですし、働きにくい環境が存在することが原因で、仕事に集中できなちということがあってもいけない。


私の所属する企業が主催し、一昨年よりスタートしている「大学生CSVビジネスアイデアコンテスト」

2018年の前回行われたコンテストは、大学生から延べ60件ものアイデアのエントリーがありましたが、解決する社会課題として挙げられたテーマで最も多かったのは、LGBTとプラスチック廃棄問題。

Z世代と呼ばれる若者層の関心も高く、LGBTフレンドリー企業への購買意欲も高まるという調査結果。まずは、社内制度の整備に取り組むことは将来のビジネス成果へと繋がることでしょう。

ダイバーシティとマーケティング -LGBTの事例から理解する新しい企業戦略- (宣伝会議 実践と応用シリーズ)

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